■鍛冶職人:邑田武男1949年高知県須崎市生まれ。鍛冶職人として名人と謳われた叔父戸梶氏に16歳で入門。戸梶家は代々刀匠の伝統技術を受け継いでおり、邑田氏はその技術習得のため約10年間叔父の下で修行を重ね、32歳で独立した際には、すでに現在の作品の数々を支える独自の鍛造技術を確立していました。南国市にある工房では、スタンダードな形状から依頼を受けた特殊包丁まで、さまざまな名品といわれるモデルが生み出されます。ベルトハンマーの脇にすえられた金床の上には40ワットの電球が下がっています。そのほの暗い光が、正しい加工温度を肉眼で判断する最適な環境なのです。熱せられた金属の色を見極め、絶妙なタイミングで加工を施すことで、鋼に命が与えられ、名品と称される邑田氏の包丁が作られていきます。2009年、邑田氏は高知県を代表する名工のみに贈られる「土佐の匠」を受賞し、その成熟した匠の技をいかんなく発揮し続けています。